「莫迦か。
 それ、専務に願ってどうすんだ?

 あの人が、俺と寄りを戻せって、あいつに頼みに行ったら、あなたの方がいいですって言われて終わりだよ」

「いや、悲観しすぎでしょ。
 世の中には、専務より、あんたの方がいいって人もいるわよ」
と言うと、

「その慰め方は引っかかるんだが」
と内藤は言う。

「それだと、俺の方がいいという女が変わり者で希少な感じがするぞ」

 お前、実は専務にメロメロだな、と言われてしまった。

「そんなことはないよ。
 でも――」
と言うと、でも? と内藤がこちらを見る。

「雪山でちょっと弱ってる専務には、ちょっぴり、きゅんと来たかも。
 私、弱ったケモノみたいな人が好きなの」

「お前は、どんな性癖の持ち主だ……」