100-3は? ~なにもかも秘密な関係~

「いや、古川、専務にチョコあげたって言ってたし」

「いや、そういう言い方すると、バレンタインのチョコみたいなんだけど……」

 バレンタインはまだ来てないぞ、と思うあやめの前で、内藤は言う。

「朝、エレベーターで古川に怒鳴られてたでしょう。
 専務の顔は見えなかったんですけど。

 古川が怒鳴ってるの、誰か付き合ってる男のようだ、と思って、古川の周囲を見回してみたら、専務しかいなかったんです」

 それも悲しい話だな……と思うあやめの横で、基は違うところに引っかかってくる。

「お前、俺を怒鳴ってたのか」

「はあ。
 扉閉まったので、まあ、いいかと思って」

 一宿一飯の恩義どころか、ずいぶん専務のおうちでお世話になっているのに、怒鳴っては失礼だったかもしれないが。

 ちょっと、なんというか、抑えきれない衝動が、とあやめが思っている間にも、内藤は、基にズバズバと訊いている。

「そういえば、専務は、確か、婚約者がいらっしゃるんでしたよね?」