田中さんじゃないだろうよ、と階段を下りていくあやめの足音を聞きながら、内藤は思っていた。
「いや、だったら、明日にすればいいじゃないですかっ」
と怒鳴ったあやめの口調はかなり強かった。
女同士だと、逆に気を使うから、先輩に対して、ああいう口調にはならないだろう。
「男だな」
と内藤は呟く。
あいつ、誰かと付き合ってるんだろうか。
生意気な、と思ったとき、ポケットのスマホが震えた。
見ると、メールが入っている。
予想通りの内容に、溜息をついた。
そのとき、ちょうど通りかかった、いつも一緒に社食に行っている人事の友人に、
「俺、今日、昼出るわー」
と言って、
「社食使ってくれよー」
と苦笑いされる。



