レストランはオイルキャンドルの灯りで照らし出され、いい雰囲気だった。
あやめたちは、お酒をどっちが呑むかで、無言で静かにじゃんけんをしたのだが。
あやめが負けると、基は、
「やっぱり代行で帰ろう」
と言い出した。
「でも、二人とも呑んじゃったら、此処から何処にも行けませんよ」
とあやめは言ったのだが、基は、
「いや、俺はお前に呑ませたいんだ」
と強く主張したあとで、
「……おかしな意味でじゃないぞ」
と付け加えて言ってきた。
「は?」
「酔わせて、お前を何処かに連れ込もうとか、不埒なことを考えてのことではないと言ってるんだ」
……いや、今更、何処かに連れ込まれなくても、同じ家に住んでますからね、私。
っていうか、私、もうプロポーズも受けたあなたの許嫁ですからね。
そう思いながらも、そんな基が可愛らしくもあり、ふふふ、と笑ったあやめだったが。
ん?
と思い、頭の中で、少し前、視界に入った映像をリピートしてみた。



