あー、いいお湯だったー。

 気持ちよく泡風呂から出たあやめは、バスタオルを取ろうとして、いつもと違うところに置いてあるのに気づく。

 おや?
となにかに引っ掛けてあるようなバスタオルを取ってみると、その下にカラフルな蛇口がふたつあった。

 ……蛇口。

 そして、蛇口があるのに、下に水を受ける場所がない。

 まさか、とあやめはオレンジ色の蛇口の下にコップを持っていき、ひねってみる。

 オレンジ色の液体が出てきた。

 飲んでみると、オレンジジュースだった。

 まさかっ、と隣の白い蛇口をひねると、カルピスが出てきたっ。

「たっ」
と叫びかけ、この屋敷に来てから、いろいろと学習していたあやめは、急いでバスタオルで身体を拭き、パジャマを着た。

 今、たっ、と言いかけたとき、ちょっぴり脱衣場のドアが開きかけて閉まったように見えたのは、気のせいだろうか、と思いながら、

「高倉さんっ」
と叫んだ。