食事の片付けが終わったあと、高倉は気配を消し、あやめの部屋の脱衣場に居た。

 かねてより準備していたことがあったからだ。

 だが、そのとき、高倉はあることに気がついた。

 浴室から嗅いだことのある仄かな良い香りが漂ってきていることに。

 おっと、あやめ様。
 この香りは泡風呂ではないですか。

 泡風呂だと、私が入ってくるとわかっていて、泡風呂になさっているのでしょうか。

 ということは、これは、私に入ってこいということなのでしょうかっ?

 ですが、今、この扉を開けるのは危険です。

 あやめ様は、基様と仲睦まじくなられてからは、肌もより一層艶やかに。

 今までは、まるでなかった色気もないでもないでもないでもなく――。

 ちょっと今は此処を開けられませんね、と思いながら、高倉は、

 さあ、隠していたものを棚を退けて、オープンッ!
と音を立てないよう、小さな棚を動かした。