「いや、俺が金曜にしようかなと思ってただけで、まだ誰にも言ってない」

 基が、そんな内藤の言葉を専務室で聞きながら、

 高倉。
 お前、何処から情報を得てきた……、
と思っていたその頃。

 高倉は、厨房の女性たちに頼まれ、買い出しに行っていた。

 お、あやめ様のお好きなスイーツの店だ。

 一見して、スイーツの店とわかるミントグリーンの可愛らしい外観の店の前で、高倉は足を止めた。

 ガラス張りの店内を眺め、ふふふ、と笑う。

 店の中では、若いママさんと小さな子どもが楽しげにショーケースを覗いていた。

 この仕事はいい。

 今までの仕事とは違い、自分が仕事をすることで、みんなが幸せそうに笑ってくれるから。

 内藤が聞いていたら、
「いやいやいやっ。
 お前の仕事により、俺は不幸せになっているがっ」
と訴えてくるところかもしれないが――。