「見てない見てない。
 みんな寝てるか、こっちに背を向けてしゃべってるかだろ。

 お前の親も朔馬も」

 いや、でも、と身を乗り出し、広い基の肩の後ろを見ようとするあやめを止めて、基は言う。

「……誰も見てない。
 じいさんたちも、和田さんも、高倉も傾奇者かぶきものも――」

 いや、いないと言われれば言われるほど、いそうなんですけどね、と苦笑いしながらも、あやめは逃げず。

 満天の星の下、そっとその口づけを受けた――。



                            完