「道案内という名目で人間も運んでくれなくもなかったんですが、わたくしが来ました。
神室基様のお住まいで働かせていただいております、高倉と申します」
と、いや、先に名乗れ、的な挨拶をした高倉が、ぼんやり、もこもこパジャマで立っていたあやめを黒塗りの国産車に乗せて、この屋敷まで連れてきたのだ。
箸を持ったまま到着しなくてよかった、と思うこの豪邸に。
「……業者が梱包してる間、居たんだろう。
何故、着替えなかった?」
とパジャマのまま運ばれて来たあやめを玄関で出迎え、基が眉をひそめる。
「はあ、すみません。
隠れて着替えようにも、すごい人数のかたが、すべての部屋で梱包を始めてしまって」
横から高倉が、
「掃除も業者がやるので、あやめ様は、もう戻られなくて結構ですよ。
鍵だけご返還ください」
と言ってくる。
はあ、とあやめは言った。
賃貸マンション。
老朽化で取り壊し。
まだ行き先を決めてない、というショボイ話題がまったく似合わない豪邸を見回す。
神室基様のお住まいで働かせていただいております、高倉と申します」
と、いや、先に名乗れ、的な挨拶をした高倉が、ぼんやり、もこもこパジャマで立っていたあやめを黒塗りの国産車に乗せて、この屋敷まで連れてきたのだ。
箸を持ったまま到着しなくてよかった、と思うこの豪邸に。
「……業者が梱包してる間、居たんだろう。
何故、着替えなかった?」
とパジャマのまま運ばれて来たあやめを玄関で出迎え、基が眉をひそめる。
「はあ、すみません。
隠れて着替えようにも、すごい人数のかたが、すべての部屋で梱包を始めてしまって」
横から高倉が、
「掃除も業者がやるので、あやめ様は、もう戻られなくて結構ですよ。
鍵だけご返還ください」
と言ってくる。
はあ、とあやめは言った。
賃貸マンション。
老朽化で取り壊し。
まだ行き先を決めてない、というショボイ話題がまったく似合わない豪邸を見回す。



