あやめの実家に行く朝。
あやめはレトロな雰囲気なのにピカピカという、よく考えたら、矛盾している感じのする新しい車に乗り込もうとしたのだが。
ふと、隣に並んでいる、昨日まで乗っていた車が目に入り、立ち止まった。
「どうした?」
と基が訊いてくる。
「いえ。
この車にも、いろいろ思い出があるなあと思って」
とあやめは、そのピンクのボディを見つめて笑った。
この屋敷に来てからは、いつも誰かが磨いてくれているので、この車も、ぱっと見、新車のように見える。
「……そうだな。
お前は出社するのに、どうしても俺の車に同乗しなくて、それに乗ってたな。
俺にとっては、俺に対する反抗の象徴のような車だが。
まあ、今となってはいい思い出だ」
ちょっぴり恨み言を織り交ぜながら、基は、そう言ってくる。



