いつもの癖でか、
「高倉に」
と呟く基に、あやめは、
「よっ、呼ばないでくださいっ」
と叫ぶ。
「すぐその辺で、はいって言いそうじゃないですか」
「……そうだな」
暗がりの、誰もいないはずの部屋の隅を二人で見つめる。
基は電気をつけるのをやめたようだった。
あやめは今夜たくさんのことを覚えた。
専務の過去も気になるが、深く考えない方がいいとか。
いろいろと聞かなかったことにする方が平和だとか。
だって、余計なことに気を取られているうちに、今、目の前にいるこの人がいなくなったら嫌だから。
基がその繊細な指先であやめの頬に触れて言う。
「此処まで来て逃げるなよ」
「高倉に」
と呟く基に、あやめは、
「よっ、呼ばないでくださいっ」
と叫ぶ。
「すぐその辺で、はいって言いそうじゃないですか」
「……そうだな」
暗がりの、誰もいないはずの部屋の隅を二人で見つめる。
基は電気をつけるのをやめたようだった。
あやめは今夜たくさんのことを覚えた。
専務の過去も気になるが、深く考えない方がいいとか。
いろいろと聞かなかったことにする方が平和だとか。
だって、余計なことに気を取られているうちに、今、目の前にいるこの人がいなくなったら嫌だから。
基がその繊細な指先であやめの頬に触れて言う。
「此処まで来て逃げるなよ」



