その頃、あやめは廊下でウロウロしていた。
助けてくれた専務にお礼を言いたいな、と思いながら。
いや、引っ張り起こしてくれただけなんだが……。
にしても、この屋敷、広すぎるっ。
専務の部屋はどこなんだっ!
そして、専務の部屋を見つけたとして、まず、なんて声をかけたらいいんだろうかっ。
あやめは苦悩しながら、屋敷の中をさまよっていたが、なんとなく。
ふと、なんとなく――。
専務の部屋って、私の部屋から一番遠い場所にあるんじゃないかな、と思った。
強引に近づいてきておいて、ふっと遠ざかる猫みたいな専務だから。
自分で屋敷に招いておいて、おのれの部屋からものすごく遠い位置に私の部屋を持ってきてたりとか、普通にありそうだ、と。



