そんな感じにスキー旅行のときのことを思い出しながら、あやめは会社に戻った。
秘書室に戻らなければ、と早足に廊下を歩いていたあやめは、ちょうど女子トイレからポーチを手に出てきた典子たちと出会う。
「どうだったー?
おじさん、お小遣いくれたー?」
と笑って言ってくる典子に、
「ランチおごってもらいました」
と言うと、
「何処の?
いくらの?」
と突っ込んで訊いてきた。
「あの、春になったら、桜がわーっと咲く丘のところのレストランです。
980円のランチ、美味しかったですよ」
「えーっ。
こっち来たおじさんに、わざわざ会いに行ったんでしょ?」
「980円のランチかあ。
しょぼいねー、おじさん」
とみんなが口々に言って笑う。
「い、いや~、私が食べたいって言ったんで……」
と慌てて弁解したのは、ちょうど廊下の先に居た基がすごい形相でこちらを見ていたからだ。



