100-3は? ~なにもかも秘密な関係~

「でも、専務は本当にコートがよく似合いますよね。
 身長があって、肩幅があるからですかね?」

 ……ありがとう、あやめ。

 汗だくになった甲斐があった、と思う基にあやめが言った。

「そういえば、この間の黒のトレンチも格好よかったですね」

 !?

 基はあやめが軽く言ったその言葉に、激しい衝撃を受けていた。

 あやめ。
 お前、実はコートなら、なんでもいいのかっ?

 お前がこのコートが好きなんだと思って、暑い思いをして着ていたのにっ。

 これ着てたら、抱きしめても文句言わないかと思って、着ていたのにっ。

 これ着てたら、なにしても……っ

 ……いや、なにしてもはないか、
 とちょっとだけ冷静になって思った基の前で、高倉があやめに訊く。

「あやめ様、私のこの黒いコートはいかがですか?」

 高倉は貴族に仕える使用人が着ているような雰囲気ある黒いコートを着ていた。