100-3は? ~なにもかも秘密な関係~

「やめてくださいっ、専務っ」

 小さな声だが、ピシャリとあやめは言ってきた。

「もうエレベーター来ますから」
と事務的な口調で付け加えてくる。

 基は、なんでもない風を装い、ああ、と答えた。

 だが、誰も乗っていなかったエレベーターに乗り込みながら、基は、ぼうっとしていた。

 ……振り払われた。

 昨日は、後ろから抱きしめても大丈夫だったのに。

 昨日のお前がやさしかったのは、酒が入っていたうえに、俺の着ていたコートがちょっと好みだったからなのか?

 専務室のあるフロアに着くまで、表面上は冷静にあやめと打ち合わせていたのだが。

 実際のところ、基の頭の中は真っ白になっていた。