100-3は? ~なにもかも秘密な関係~

 だが、どうにも気になっていたのだ。

 さっきのあやめの一言が――。

『専務、今日はコート違うんですね』

 旅行中は、いつもよりは恋人同士っぽくいられたかな、と思っていたのに。

 いつの間にか、あやめの態度は旅に出る前の状態に戻っている。

 あやめは旅行中、
『そのコート、素敵ですよね』
と何度か口にしていた。

 まさか……。

 こいつ、もしかして、俺じゃなくてあのコートが好きなのか?

 いや、そんな莫迦な、と思いながらも、あやめが絡むと、どうにも自分に自信がなくなる基は、少し早足になって、エレベーターの前でボタンを押して待つあやめに追いついてみた。

 幸い、まだ駐車場に他の人影はない。

 基は、
「あやめ」
と呼びかけ、その手を握ってみた。

 だが、ビクリとしたあやめは、即座に基の手を振り払う。