基たちの乗った車が会社に着いたとき、社屋の前のロータリーは車でごった返していた。
「ああ、今日、イベントの打ち合わせがあるんでしたね」
とその様子を見ながら、横からあやめが言ってくる。
「じゃあ、地下に下りろ」
と基が言うと、すみません、と言って、運転手は地下駐車場に車を回した。
まあ、どうせ、エレベーターに乗るのなら、何処からでも同じだ。
そう思いながら、基は車から降りた。
エレベーターの扉を急いで開けなければ、と思っているらしいあやめの方が先を歩いていた。
だが、そのあやめのスレンダーな後ろ姿を見ていた基は思う。
薄暗い地下の駐車場。
今降りた車も車庫に行ってしまったので、うまい具合に、俺たち以外、誰もいない。
……って、俺は変質者か、と自分で自分に突っ込みそうになる。



