嗅覚の鋭い浜波さんたちには、隠してもどうせバレるしなーと思い、秘書室全体には、あやめからだけ。
専務専用秘書室への土産は、あやめと基からのものを両方渡したのだ。
浜波に要求されて、あやめは旅行のときの話をしていたのだが。
「ちょっと待って」
と途中で浜波が言い出す。
「なにそれ。
一緒に旅行に出たけど、なにもされなかったから、いい人だとか意味わかんないんだけど。
実はこっちが待ってたら、どうするのよ?
そんなの、なんにもやさしくないわよ。
あー、あんたと専務に艶っぽい話、期待しても無駄だった。
なにかこう、二人とも恋愛に慣れてないっていうか。
中高生でも、いまどきもっと進んでるわよって感じなんだけど」
そうですね。
そうかもしれませんね。
でも、専務がそんな感じで、ホッとしている私がいます、とあやめは思っていた。



