「帰りは大道通らなかったから、誰が傾奇者だったのか、わからないですねー」
とあやめは帰りのタクシーの中で言って、
「なにが傾奇者だ、莫迦者」
と言われてしまった。
いや……傾奇者って言ったの、専務ですからね。
充分観光を堪能して、新幹線で戻ってきたのだ。
タクシーで家に戻っていると、基が運転手に、
「すみません。
やっぱり、港で降ろしてください」
と言っていた。
「え? どうしたんですか?
高倉さんが、晩ご飯用意して待ってますよ」
いや、用意するのは、シェフなのだが、高倉がそう言ってきたこともあり、頭の中では、割烹着を着た高倉が煮物を作ってくれていた。
「ちょっと寄り道していこう。
夜景が綺麗なところがあるんだ」
と基は言った。



