あやめが部屋に戻ると、基はちゃんと和室にいた。
この人なにやってるんだろうなあ。
この部屋テレビもないし、布団もないはずだけど、と障子の向こうから窺いながら、あやめは思う。
「専務ー」
と中に向かい、呼びかけた。
「お風呂、いいお湯でしたよー。
ありがとうございます」
専務もどうぞー、と言ってみたが返事がないので、
「開けますよー」
と言って障子を開けると、基は、なにもない部屋の中央に目を閉じて、正座していた。
なにか崇高な瞑想にでも耽っているような厳しい顔つきだ。
今、仕事でなにか困った案件でもあったかな、と思いながら、あやめは近くまで行き、呼びかける。
「専務、お風呂ありがとうございました。
専務もどうぞ」
そこで、基はようやく目を開け、あやめを見て呟いた。



