カニは、此処まで食べられれば、本望だろうと言うくらい綺麗に食べられ――、
いや、まあ、なんにも本望ではないと思うが……、
あやめは、次の料理が出るまで、残りのワインを呑んでいた。
「あー、最高ですねー。
お酒も美味しいし。
高倉さんもなにか召し上がってから戻られればよかったのに。
お風呂も此処、ぬるっとしてて、すごく肌によさそうな泉質でしたよね~」
そう呟くと、基が、突然、
「じゃあ、今度は高倉と来ればいいじゃないか」
と機嫌悪く言い出した。
いや……さっきまで高倉さんに感謝していたようなのに。
何故、そこでいきなり切れますか、とあやめは思う。
「でも、こうして話題に出していると、本当に今すぐ現れそうですよね、高倉さん」
とあやめが言うと、基は何故か青ざめ、
「……そうだな」
と呟く。
そのあとは、もう高倉の話題は出ず、二人で楽しく食べて呑んだ。



