100-3は? ~なにもかも秘密な関係~

 でも、今日のそのコートはとても好みです、と内藤辺りが聞いたら、
「それお前、専務じゃなくて、コートが好みなんだろ」
と言いそうなことを思う。

「お前は俺の許嫁だしな」

 まあ、許嫁なんですって、と近くで葉もない大銀杏を見上げるフリして話を聞いているおばあさまがたが小声で言い合うのが聞こえてきた。

 ……あの、場所変えませんか、専務。

「だが、お前が最初から決められていた俺の許嫁だとしても、俺は俺の意思で、お前に結婚を申し込みたい」

 あなた、そこらで聞き耳を立てているおばあさまたちを卒倒させるおつもりですか。

 いや、私もしそうになってますけど。

「――と、さっきは、そんな感じのことを旅の終わりにでも言おうかなと考えながら歩いていたので、不機嫌になってしまっただけだ。

 本当にそれだけだ、他意はない」
と言う基に、

 いや……、旅の終わりにって、あなた、もう言っちゃってますけど、とあやめは思っていたのだが。

 基の中では、今のセリフは説明であり、実際に言ったことにはなっていないようだった。