境内に戻ると、銀杏ももう終わっているのに、境内には結構、人がいた。
黙って前を歩いていく基のコートの背を見ながら、あやめは思う。
桜はないわ、銀杏はないわ、おはこだわ。
1分で乗り換えないとトリックが完成しないわ。
そりゃ、不機嫌にもなるよね、と。
せっかく専務、私の旅行計画に付き合ってくれたのに――。
「専務、すみませんでした」
とあやめが謝ると、基が振り返る。
「私の計画がいたらないばっかりに、無駄足ばかり踏ませて。
つまらなかったですよね」
と謝ったのだが、基は、
「いや、すまん」
と何故か、謝り返してきた。
「不機嫌だったわけではないんだ。
ずっとよそ事を考えていた」
「なにを考えていたんですか?」
自分が専務を怒らせたのではないとわかって、ホッとしながら、あやめは訊く。



