細い坂道を歩いていると、突然、基が、
「歌え」
と言い出した。
「は?」
「クマが出る」
と足を止めた基は道の横にあるクマ注意の看板を見る。
「ほんとだ。
もう冬なのに……」
まだクマが出ます、注意っ、と太いマジックで書き足してある。
このクマじゃあまり怖くないような、と思う愛らしい顔のクマの看板を見ながら、基が言った。
「まだ暖かいからな、この辺は」
「遭難した雪山も、クマが出ない、という点ではマシでしたかね」
戻りましょう、専務、と言ったが、基は、いや、と言う。
「だが、お前の計画では――」
と言いかける基を遮り、
「私の計画はもういいです」
と言うと、
「そうなのか?
せっかく立てたんだろうに」
と基は言ってきた。
……もしや、季節感無視の計画表に従ってくれていたのは、ただの意地ではなく、親切だったのか?
と気がついた。
「歌え」
と言い出した。
「は?」
「クマが出る」
と足を止めた基は道の横にあるクマ注意の看板を見る。
「ほんとだ。
もう冬なのに……」
まだクマが出ます、注意っ、と太いマジックで書き足してある。
このクマじゃあまり怖くないような、と思う愛らしい顔のクマの看板を見ながら、基が言った。
「まだ暖かいからな、この辺は」
「遭難した雪山も、クマが出ない、という点ではマシでしたかね」
戻りましょう、専務、と言ったが、基は、いや、と言う。
「だが、お前の計画では――」
と言いかける基を遮り、
「私の計画はもういいです」
と言うと、
「そうなのか?
せっかく立てたんだろうに」
と基は言ってきた。
……もしや、季節感無視の計画表に従ってくれていたのは、ただの意地ではなく、親切だったのか?
と気がついた。



