100-3は? ~なにもかも秘密な関係~

 細い坂道を歩いていると、突然、基が、
「歌え」
と言い出した。

「は?」

「クマが出る」
と足を止めた基は道の横にあるクマ注意の看板を見る。

「ほんとだ。
 もう冬なのに……」

 まだクマが出ます、注意っ、と太いマジックで書き足してある。

 このクマじゃあまり怖くないような、と思う愛らしい顔のクマの看板を見ながら、基が言った。

「まだ暖かいからな、この辺は」

「遭難した雪山も、クマが出ない、という点ではマシでしたかね」

 戻りましょう、専務、と言ったが、基は、いや、と言う。

「だが、お前の計画では――」
と言いかける基を遮り、

「私の計画はもういいです」
と言うと、

「そうなのか?
 せっかく立てたんだろうに」
と基は言ってきた。

 ……もしや、季節感無視の計画表に従ってくれていたのは、ただの意地ではなく、親切だったのか?
と気がついた。