今度は高倉には、映画を選ばせなかった。
ちょっと雰囲気のある昔のフランス映画だ。
まあ、高倉が選んだのも、雰囲気のある昔の映画ではあったのだが。
先が気になるミステリーだったのが失敗だった。
今回のは、なんとなく流して見られる感じの映画だから、オッケーだろう。
そんな映画を作った人間に後ろから飛び蹴り食らわされそうなことを基は考えていた。
あやめと並んで映画を見ながら、しばらく黙って酒を呑む。
20分経ったら、話を切り出そう、と基はチラチラ時計を見ていたのだが、5分も経たないうちに、あやめの方が口を開いた。
「映画見てるとポップコーン食べたくなりますよね」
スクリーンを見たまま、あやめがそう呟いた次の瞬間、ドアが開いて、高倉が大きなカップに入ったポップコーンを持ってくる。
二人の間に置くと、そのまま出て行った。
だから、話聞いてんなよっ、と思いながらも。
これ以上、邪魔されないうちにと、基は腹をくくって訊くことにした。
「あやめ、何処か旅行に行くのか?」
此処なら、なにやら素直になれるな、暗いからかな、と思ったとき、あやめが答える。



