その頃、朔馬も同じことを考えていた。
なんで、あやめなんだろうな……。
他にもたくさん一族の娘はいるのに。
なんで、あやめを神室にあてがった?
あやめは美形ぞろいの一族の中でもかなり可愛い。
性格も温厚だし、……まあ、ちょっと変わってはいるが。
じいさんたちが、わざわざ許嫁を決めてやらなきゃ、相手が見つけられないというわけでもなかろうに。
なんだろう――。
うちと神室の一族に因縁な怨念があってとか?
いや……、結婚させようというのに、怨念じゃないか。
なにか神室一族とつながりを作っておきたいわけでもあるのか。
「あーっ、仕事にならんーっ」
とデスクで叫ぶと、
「いやー、仕事してくださいよー、大神さん」
と言いながら、物言いの穏やかな上司が通っていった。



