基がひとり苦悩していたその頃、あやめは、お風呂上がりに部屋のドアを開けてみた。

 すると、ドア側の壁に雑誌が二冊、立てかけてあった。

 高倉はちゃんと言われた場所に置いていたようだ。

 珍しいな。
 ちゃんと言うこと聞くなんて、と思ってしまう。

 いや、使用人としては、当たり前のことなのだが。

 高倉さんだからな。

 それにしても、今日は泡風呂じゃなかったから、高倉さん来なくてよかった、と思いながら、あやめは雑誌をぺらぺらめくりながら、部屋に戻る。

 露天風呂つきのお部屋とかいっぱい載ってて、うっとりするなーと思いながら、専務が買ってくれた素敵なベッドに転がったとき、気がついた。

 ……そういえば、高倉さんって、泡風呂でない日は部屋に入ってこないな、と。

 そこは、さすがに気を利かせているのだろうか……。

 って、なんで、高倉さんは、私が泡風呂に入ってるかどうか、わかるんだっ?

 むしろ、怖いっ、と起き上がったあやめは、めくりかけた雑誌を放って、室内を見回した。