「そうです。
 私があやうく、あなたに殺されるところだった許嫁の、古川(こがわ)あやめです。

 ……私の名前も知らなかったんでしょう?」
とあやめは言って、

「興味がなかったからな」
とあっさり言われる。

「で、なんで、お前はうちの会社にいて、俺の秘書室にいる」

「だから、あなたの秘書室には、あなたが呼んだんですってば」
とまだ混乱中の基に訂正しながら、あやめは言った。

「まあ、実は、話せば、全然、長くない話なんですが――」

「じゃあ、話せ」
と即行、言われたので、語ってみた。