仕事が終わったあと、あやめは予定通り、ドラッグストアでいつも買う化粧品を眺めていたのだが。

 ふいにスーツを着た人の気配を感じて、びくり、と振り向いてしまった。

 だが、それは奥さんに頼まれたのか、熱心にメモを見ながらハンドクリームを探しているおじさんだった。

 でっぷりとした人のよさそうなおじさんを見ながら、自分で、どうやって専務と間違えたんだ……と思ってしまう。

 いやいやいや。

 専務が気になってるとか。

 いやいやいや、ないないない、と思ったとき、
「あやめ?」
と声がした。

 振り向くと、内藤が立っていた。

「あれ?
 なにしてんの?」
と問うと、内藤は、

「目薬買いに来たんだ。
 職場にいると、乾燥してるし、目が充血するんで」
と目頭を押さえながら言う。