100-3は? ~なにもかも秘密な関係~

 デスクを回ってこちらに来た基は、
「……何故、逃げる?」
と言いながら、近づいてくる。

 ひいいいい、とあやめは慌ててドアノブをつかもうとしたが、その手を基につかまれた。

 ちっ、近い近いっ、近いです、専務っ。

 基はあやめの真横に立ち、あやめを見下ろしている。

 朝は私がいくら目を合わせようとしても、合わせなかったくせにっ。

 なんで、今度はそらさないんですかーっ。

 この場から逃げ出したいと思うのに。

 基の長く細い指につかまれた、ノブを握る手が震えて動かない。

 高校生のとき、よく男子が、女の子の髪の香りが鼻先でして、ついて行きそうになるとか言っていたが。

 私は今、専務のいい香りに目眩がしているんですが。

 立場が逆ではないですかっ?

 そして、専務。
 私はちゃんと、いい匂いしてますかっ?
と女子として、心配になる。