ああは言ったが、よく考えると、確かに、あやめは怪しいな、と思いながら、基は部屋に戻っていた。
すると、いつの間にか、横をあやめが歩いていた。
「どうしたんですか? 専務。
難しい顔して。
なに考えてるんですか?」
と問われて、
「いや、これはなにかの罠だったんじゃないかと」
と正面を見たまま、言ってしまう。
「罠?」
とあやめに問い返され、ああ、しまった、と思った基は、しょうがないので、そのまま訊いてみる。
「お前、あのとき、俺を惚れさせようと、チョコを口に押し込んだのか?」
その言葉に、きょとんとして、あやめが訊いてきた。
「……惚れたんですか?」
うっ。
しまった。
あやめにそのような意図がなかった場合、こっちが惚れてしまったから、そういう訊いたように取れるな、と思いながらも、
「そんな莫迦なことあるわけないだろう」
そう固い表情で言い返し、基はその場を去った。



