「へー、産業スパイですかー。
もうそんな時期なんですねー」
夕食のとき、今日聞いた産業スパイの話題が出ると、高倉がそんなことを言い出した。
秋になったから、サンマですね、みたいな感じだったが、そういう意味ではないようだった。
「基様も、そろそろ重要機密事項も任される時期になったと思われてるんですねー」
喜ばしいことではないですか、という口調だ。
「ところで、どなたか思い当たるような怪しい方でもいらっしゃるんですか?」
と高倉に訊かれ、
「いや」
と基は答えていた。
「まあ、基様の近くにいて、怪しいと言えば、私ですかねー?」
コーヒーポットを手に、高倉は自分でそう言って笑う。



