「専務、帰るのめんどくさいですね」
さんざん呑んだあとで、あやめはそんなことを言い出した。
「此処は家だが……」
「この家は広すぎます。
専務、このブランケットで寝ましょう」
部屋に戻るのがめんどくさくなったあやめは、膝にかけていたブランケットを肩まで引っ張り上げて寝ようとする。
「おい、風邪ひくぞ」
とリクライニングシートに転がるあやめに言うと、
「キャンプみたいでいいじゃないですか。
そういえば、今、流行ってるらしいですね~。
おうちでキャンプ」
と目を閉じたまま、あやめは言う。
「庭でだろ、それ」
此処は室内だ、と基は言った。



