今日も、基はまだ帰ってはいなかった。
「遅くなりそうなので、先にお召し上がりくださいとのことです」
と高倉が言う。
この間は、そう言われても、待っていたのだが。
今日は、酒の席にも少し付き合うので、食べないかもしれないと言われ、あやめは、ひとり、広い食堂で夕食をとった。
「お寂しいですね」
と給仕しながら、高倉が言ってくる。
豪奢な食堂を見回した高倉が、
「テレビとかないですもんね」
と言うので、
「そうですねー。
なにか音が欲しいですねー」
とあやめは、なんとなく言った。
すると、
「なにかクラシックでも流しましょうか」
と言われる。



