「紗良、おはよう」


 朝学校へ行くために自宅を出ると、いつもように光雅くんが佇んでいた。

 彼らしく、穏やかで小さな笑みを浮かべて。


「お、おはよう」


 恋人同士になってからもう一ヵ月も経つのに、毎朝この瞬間はどうしても照れてしまう。

 慣れない自分が子供っぽいと思えて、私は必死に気安く言ったつもりだったけれど、返した挨拶はやっぱりたどたどしい。

 そう、もうあの流れ星が降る夜からひと月経った。

 私の恋人の光雅くんは、毎朝私を家まで迎えに来てくれる。

 学校でもいまだに隣の席だし、放課後もよくデートをしているから、一緒に居られる時間は長いにもかかわらず。

 どうしても、朝一番に会いたいんだって彼に言われて。

 私は世界一の幸せ者だと思う。


「今日の体育、男子はマラソンだって。女子は?」

「あ、そういえば女子もそんなこと言われてたかも……。嫌だなあ、最近暑くなってきたのに」

「だよなあ。走るだけってつまんないよな」


 肩を並べて歩きながら、他愛のない会話をふたりでする。

 これもここ一ヵ月の、いつもの光景だった。