隆之が私の髪を撫でる。
いつも優しい。

「旅行とか、どっか行けねえかなー。」

天井を見上げながら呟く。

「いいよ、隆之忙しいでしょ。無理しないで。」

私の強がり。

「ほんと?どっか行きたくない?」

隆之が私の目を見る。

「んー、行きたいけど。」

飲屋街から一本裏に入ったところにあるホテル。
そこに私と隆之はいた。

金曜日。
仕事帰りにホテルで待ち合わせ。

明日は休み。
一週間が早い。

三連休だけど、今のところ何の予定もない。
旅行に行きたいけど、そういうのはなんとなく女友達と行きたい気分。

隆之が時間を確認する。
きっと電車の時間を意識してるんだ。

「そっかあ。俺とは行きたくないってか。」

隆之はそう呟いて上体を起こす。

エスパー?
心の中を読まれてたなんて。

そろそろ22時。
眠いけど帰る準備しないと。

私も上体を起こそうとした、その時だった。

突然隆之と私のスマホが大きく鳴った。

緊急地震速報のアラームだ。
嫌な響き。