濡らしたタオルを額に当てたら、
熱が下がるのかもしれない。
俺は急いで洗面所に行き、
桶に水を入れると、
タオルをしぼって琴梨の額にそっと置いた。
目の前で、琴梨がこんなに苦しそうにしているのに、
助けてあげることができない自分に腹が立つ。
助けてあげることができない?
なんだそれは!!
高熱で苦しんでいる以上に、
琴梨を苦しませたのは、俺自身じゃないか!!
子供たちに絵本を読む琴梨の笑顔は、
天使が微笑むようにかわいいのに、
その笑顔を奪ってしまったのは、
俺自身じゃないか!!
なんであの時、
琴梨がすみれ色のワンピースを
着て俺の前に現れた時に、
『かわいい』って、
素直に言ってあげられなかったんだろう……
俺の好物のネギトロ巻きや
ロールキャベツを作ってくれたのに、
『すげー嬉しい』って、
喜んであげられなかったんだろう……
琴梨が一人寂しく待つこのアパートに、
帰ってあげなかったんだろう……
目の前で苦しんでいる琴梨の心を、
引きちぎるように苦しめてた現実に、
俺は自分が憎くて憎くてしょうがない。
ごめん、琴梨……
本当にごめん……
俺はベッドで横たわる琴梨の頭をなでながら、
流れる涙を抑えきれなかった。
「礼音くん……」
「琴梨?どうした?」
「礼音くん……礼音くん……礼音くん……」
目をつぶったまま、
苦しそうに俺の名前を呼び続ける琴梨。
「ごめん。俺、どこにも行かないから……
ずっと琴梨のそばにいるから……」
琴梨はうっすらと目をあけると、
また目をつぶった。
俺はベッドサイド座り、琴梨の手を握ったまま、
いつの間にか眠ってしまった。



