アパートの前に着くと、
嫌な予感しかしなかった。
部屋の電気が、一個もついていない。
急いで階段を駆け上がって、
玄関のドアをあけてリビングに走った。
「琴梨? 琴梨?」
リビングの電気をつけると、
テーブルの上に置かれていたものに目がいった。
それは、
琴梨にプロポーズした時にはめてあげた指輪。
そして、
俺が琴梨に告白した時に渡した絵本、
『ハチドリと虹色のさかな』が置いてあった。
その絵本に、手紙が挟んであった。
『礼音くんへ。
礼音くんがいなかったこの4日間、
ずっと考えていました。
どうしたら、礼音くんにもう一度、
好きになってもらえるかなって。
どうしたら、
また抱きしめてもらえるかなって。
でも、それが間違っていたんだよね。
最初から、礼音くんの運命の相手は、
私じゃなかったんだよね。
私なんかが、
礼音くんと釣り合うわけがないって
わかっていたのに、
この2年3か月が幸せすぎて、
ずっと礼音くんの隣にいてしまいました。
たくさんの幸せをありがとう。
礼音くん、バイバイ。
追伸
残りの荷物は、近いうちに取りに来ます。
礼音くんが仕事の時間に来るので、
安心してください。 琴梨」
琴梨が……
いなくなってしまった……
一週間前には、
俺の隣で微笑んでくれていた琴梨が、
俺の前から去ってしまった……
あんなに幸せだったのに……
琴梨と一緒にいられる時間は少なくても、
琴梨を抱きしめながら眠りにつくだけで、
充分だって思っていたのに……
それなのに、なんで俺は、
琴梨を傷つけてしまったんだろう……
俺は慌てて、琴梨に電話を掛けた。
何回も……何回も……
でも琴梨は、出てはくれなかった。



