あたしが一緒に行ってと言うと、とても満足そうに泉は笑った


おいで

とあたしの手を引いて、紗羅ちゃんの家の扉を開けた


家の中は静かで
人の気配はなかった


何を話せばいいか、未だに戸惑う部分はある。怒りたいわけでもないし、責めたいわけでもない。

ただあたしは


普通に友達になれたらなって思ってた


そう思ってたんだけどな




「…紗羅ちゃん」



カーテンも閉め切った薄暗い部屋で、小さくしゃがみ込んでいるのは、紗羅ちゃんだった


あたしの声にピクリと反応して顔を上げたが、その顔は見れたもんじゃなかった



「水瀬にやられた?」

近くにしゃがみ、紗羅ちゃんの頬に触れると、手を払い退けられる


「心配なんてしないで。なんで、杏ちゃんが来るのよ…」


紗羅ちゃんの声は掠れている
泣いて声が枯れたのか



「なぁ、少し話さへん?2人で」


おい、杏!と泉は言ったが、大丈夫
2人じゃないと…


「大丈夫やから。なんかあったら、殴ってでも抵抗するし。少し話したらすぐ呼ぶから。玄関の前で待っててほしい」