愛は惜しみなく与う③

父さんがそう言うと、朔の父親は、唇をぎゅっと噛み締めて、玄関の扉を思いっきり閉めて出て行った

なんなんだ
玄関でポツリと残されたのは、私と父さん。



「朔は、まだ帰ってきてないんだよな?」

「うん。朔と泉はまだ海斗さんのところで、杏と居る」


朔はよく家にくるから、父さんも可愛がっている。朔の家の事情も、少し知ってる。

父さんが来てくれなかったら、殴ってたかも


「あの人、なんだって?途中からしか聞こえなかったけど」

「…なんか朔が、あの義理の弟を連れ去ったとかなんとか…」

「朔から関わることなんてないのにな」


泉くんに伝えておきなさいと、父さんは言って家の中に入った。

ここ何年か、朔の家族の話なんて話題にもなりませんでした。
朔も、その手の話は嫌がりましたし。

義理の弟

そう聞くと、朔の過去の話を思い出して、胸糞悪い…


とりあえず泉に話しましょう


また朔が荒れてしまうかもしれない…


せっかく最近は、全く荒れることもなく落ち着いていたのに。
でも話さなければ。朔が何かに巻き込まれる前に


------