慌てて椅子から立ち上がる


「待って、頭を下げないでくれ。頼まれるから、杏を守る訳じゃない。信用できないかも知れないし、俺たちはまだ、何も分かっていないに等しいかもしれない」


それでも…
この何ヶ月かで思ったんだ



「でも、分かりたいと思うし、杏の傷ついた顔は見たくない。その為なら、俺たちはなんでもするから。
志木さんも無理のないように…杏を守ってあげてください」


俺にはこう言うしかできない。
俺にこの人を止める権利もない。

ただ、あの最初に会った時よりもスッキリした顔の志木さんは、杏のために命を捨てるような行動は取らないと思う



「……はい。あなたには、この事を伝えておかなければいけない気がして。
それでも、あなたが思う以上に、杏様は悲しい決断をしています。それは私があの時に、止めなければいけなかったのに。私はそれができなかった。
もし、杏様がそれをあなた達に話す時がきたら…」


志木さんも涙ぐむような悲しい決断って、なんなんだろうか
志木さんの瞳から涙がこぼれた