愛は惜しみなく与う③

「杏様が私と薔薇を作って居場所を見つけて、鈴はそれに嫉妬していました。
自ら望んだ地位と権力と将来性。それを手にしてもなお、杏様の生活を羨んでいました。杏様はあの通りのお方です。

鈴を可愛がって、世話を焼いて、我儘を言う鈴に対しても、丁寧に対応していました。

鈴は、私のことが好きなんです。その私が杏様の専属の執事っていうのも、気に入らなかったんだと思いますが」


私は幼い頃から杏様以外に仕える気は、1ミリもなかったので。



「1度だけ大喧嘩していた理由が、鈴が私を専属の執事にしてくれと。私が欲しいと、泣いたとき。杏様は、怒っていました。
志木はモノじゃない。欲しいとか言うな！ってね。可愛いですよね、杏様は。私のことで初めて怒ってくれたのです」


ちょいちょい惚気のようなものを挟みながら、志木さんは話す。

とりあえず妹は、杏の執事だった志木さんの事が好きで、欲しい言い、杏に怒られていたんだな


志木さんの取り合い？


「その一回だけですかね、お二人が喧嘩していたのは。基本的に杏様は、妹にはとても優しかったので」