愛は惜しみなく与う③

そ、うか
志木さんはこの事実を、1人で抱えていたのか。

杏の妹が生きてるなんて…



「ただ、生きているのは確定です。それも身代金など要求されていませんし、鈴様が自ら東堂に戻らないとしか思えません。

理由は正直全く見当もつきませんね。ただ憶測でなら話せますが」


悲しそうな顔で話す
杏が知ったらどうなってしまうのか。

だって、杏は…



「妹のために人生捨てたのに…」



どんな理由があったとしても、それはきっと理不尽で、杏を悲しませる理由だと思う



「そうですよね。本当に。あの女は、サトルと手を組んで、杏様を陥れたとしか、考えられません」


そんな1番悲しい理由だなんて、想像でもしたくない。


「杏と妹は仲悪かったのか？」


「いいえ。性格は違っていましたが、双子のように顔は似ていて、2人は仲良しでした。

ただ、跡取りになりたい鈴と、東堂から逃げたい杏。お互いそれぞれを手に入れたときに、鈴の方がおかしくなったんでしょう」


やってられませんね。そう気怠げに志木さんはため息をついていた