「愛美先生、本島に戻るんだろ?
寂しくて漬け物やけ食いしたんだよ。

うちの孫と結婚して島にずっといておくれよ」

ハナさんが目を潤ませて小さな暖かな手で私の手をぎゅっとにぎる。

「えー?ハナさんのお孫さん中学生でしょ?
犯罪だよそれっ!

ハナさん、悲しんでくれてありがとう。
でも私のかわりにイケメンなお医者さんくるから安心して?

涼二先生って言うの。
私の弟。私によく似たむちゃくちゃいい男!」

ハナさんの目がパッと輝いた。

「イケメンドクター!

愛美先生、長い間お疲れ様でした。
どうもありがとう。

本島に帰っても元気でな」

ハナさんの変わり身の早さに苦笑いしたが、私の離島勤務ももうじき終る。

私と入れ違いに研修医を終えた弟の涼二が入れ違いで来月から勤務する。

この三年、島から出ることがなかったが、勤務修了目前にして私は夕方の船で結婚式に出席するために東京へ帰る。