少しネクタイを緩めたスーツ姿で、 社長が、そのドアにもたれかかっている。 感情の読み取れない瞳が、さとみをみつめる。 社長がウイスキーをくちにする。 でもその目は さとみをとらえて離さない。 心臓の音が聞こえそうなほど 静かな空間。 さとみは思わず、小さく深呼吸をした。 固まったように動けないさとみに 「どうぞ」 社長が感情のこもらない声で言った。 ふるえる指で さとみは ゆっくり上着を肩から落とした。