メリーゴーランドは空席

「あのさぁ……」
のんびりとした幸人くんの声で、自分の世界に入っていた私はリアルに戻される。

「おばさんに聞いたんだけど、葵ってウサギが好きなの?」
「え、急にどうしたの?」
幸人くんは左耳のピアスを触りながら、言いにくそうにしている。

「ウサギ、好きだよ?」
幸人くんの言葉の続きが知りたかったこともあって、語尾が半音上がってしまった。

「オレさぁー、ほんっっとガラじゃないってわかってるんだけどさー……」

幸人くんは立ち止まってうつむいてしまった。

「駅ビルにウサギの雑貨屋、見つけた」

小さな声で早口だった。

「え?」
思わず聞き返してしまう。

「だから、葵の好きそうな店、見つけたから連れて行きたいっつってんの!」