メリーゴーランドは空席

男子は更に近づいてくる。

私はベンチから立ち上がり、少し離れた。


「オレと付き合お?」
大きな瞳に見つめられて、鳥肌が立つ。


「無理です、付き合えません」
私は震える声で、でも聞こえるように出来るだけ大きな声で言った。


「え、なんで?」
男子は心底信じられないというような表情だ。



「オレが誰だか知ってるよね?4組の田島だよ?」



だからどうしたんだと思ってから、ふと思考が停止した。




田島?


田島って言った?






私は今朝の教室での嬉しそうな桜井さんの笑い声を思い出す。






桜井さんの好きな人って、確か「田島」って言ってなかったっけ?




背中に冷たいものが伝っていく。