メリーゴーランドは空席

「幸人くん」
「ん?」
幸人くんはジュースをひと口飲んでから、私のほうを向いた。

「私、本当は入学式に行くつもりだったんだ」
「……え?」

「高校の入学式の日、ものすごく久しぶりだったけれど家から出てね、駅まで行ったんだ」
幸人くんは黙ったまま、静かにうなずいた。

「新しい制服を着て駅のホームに立ってたら、ジロジロと見られているような気がして……」
私はその日のことを思い出しながら話す。

「……自意識過剰だって思うだろうけど、視線を感じてると居心地が悪くてね、そのうち気持ち悪くなった」
「うん」

「それでちょっと座ろうと思ってホームのベンチのほうを見たらね、中学の……あのクラスで一緒だった女の子がいたんだ」