メリーゴーランドは空席

「おごるよ、何がいい?」
「じゃあ、オレンジジュース」

ガコンガコンッと缶ジュースが落ちてくる。
幸人くんからオレンジジュースを渡された。
幸人くんは自分に炭酸ジュースを買っている。
缶にはレモンのイラストが描いてあった。


「……はじめて」
私は小さな声で呟く。
「はじめて、友達におごってもらっちゃった」
「友達……」
幸人くんが笑う。
「あ、ごめん。私なんかと友達って言っちゃった」
自然に出た言葉に自分でも驚いて謝る。


「何言ってんの」
幸人くんが真剣な顔をして言う。
「『私なんか』とか言っちゃダメだって」

幸人くんはジュースを開けて、ベンチに座る。
私のすぐ隣には座らなかった。
ベンチの端と端に座っているから、空いた距離が少し照れくさい。