幸人くんの足音が廊下の階段をおりていく。



「待って!!」



私は部屋のドアを開けた。
ドアを出てすぐの階段。
幸人くんがこちらを見ている。


茶髪で少し長めの前髪。
キリッとした瞳。

「あ、あの……、私」


何か言わなきゃ。
そう思っているけれど、言葉が続かない。


幸人くんが階段をあがってきて、私の目の前に立った。





「久しぶり」





幸人くんがポツリと呟く。
優しい声。




今まで幸人くんに会うことすら怖いと思ってた。
私をどんな目で見るんだろう?
幸人くんにまで嫌われたらどうしよう?
だったら会わないほうがいい、そう思っていた。


でも私、幸人くんに……。



「会いたかった」


幸人くんがそう言って笑ってくれたから、
「私も」
と言って、私も笑った。

私の両目には涙が溜まっていたことを幸人くんはきっと気づいていたけれど、そのままふたりで少しの間笑いあった。